2-2. 昭和な働き方 - 日本的雇用慣行 ~ より多くのモノを計画通りに作り続ける

<企業戦略 ~ 市場成長以上の成長>

高度経済成長期の市場は需要が拡大する市場であり、作れば売れる時代でした。

静的な”競合優位の獲得・維持”することが企業戦略であり、すなわち、市場成長以上に成長することでした。

そのためのポイントは単純化すると

  ”より多くのモノを計画通りに作り続ける”

ということにあります。

 

<より多くのモノを作り続ける ~ 終身雇用と年功序列

作れば売れる時代に、市場以上に成長するためには

  同じ人数で生産性を高める (同じ人数でより多くを生み出せるようにする) または

  同じ生産性で多くの人数で生産する

必要があります。

人口ボーナス期である高度経済成長期には、初等教育を受けた(労働力として)優秀な人材が多くいました。

その労働力を長期で安定的に確保し、市場以上の成長を実現するめ、日本型雇用慣行といわれる終身雇用制度・年功序列制度が整備されていきました。

この終身雇用制度・年功序列制度は以下の3つの特徴によって支えられています。

 

1. 年功賃金制度

モチベーションを維持し定年まで働いてもらうためには、年功序列での賃金制度が必要です。

裏を返すと、若年層の賃金を抑える実質的な賃金後払い制度となっています。

 

2. 中途退職が不利になるインセンティブ体制

途中退社を阻止するため、金属年数に応じた退職金制度を制定した。

これも実質の賃金後払い制度です。

 

3. 企業内のどの職場でどんな仕事でも行うことが求められる包括的な働き方

就職ではなく、就社といわれるメンバーシップ型雇用により、会社側都合での配置を実施できる制度として設計されました。

 

<モノを計画通りに作り続ける ~ トップダウン組織と減点評価>

いわゆる日本型雇用慣行のほかにも、モノを計画通りに作り続ける組織・評価制度も設計・定着していきました。

そのポイントは単純に書くと

  トップが決めた計画を確実に遂行する

  そのためにミスは(限りなく)ゼロにする

ということになります。

 

そのための組織・制度・文化の主なポイントをいくつか列挙したいと思います。

 

1. 組織:ヒエラルキー組織

人の生死、国の存亡に関わる軍隊は、トップの指示を確実に末端に伝え、行動できるよう、単純な上下関係のみの厳格なヒエラルキーの組織構造を持っています。

(ティール組織の順応型=アンバー組織)

逆に言うと、現場が異なる複数の指示を受けた場合、それは部隊の全滅のみでなく、戦闘の敗北につながりかねないため、徹底的に指揮命令系統の単純化の組織構造を持っています。

高度経済成長期の日本企業も、軍隊と同じヒエラルキー組織により、計画・指示を確実に遂行する体制を確立しました。

 

2. 評価制度:減点主義

トップダウンによる統治を前提としたヒエラルキー組織をより機能させるため、減点主義による評価制度も導入されました。

それは、生産に支障をきたす行為、組織の輪を乱す行為、指示に従わない行為に対し、明確にペナルティを与える制度になっています。具体的には

  ミス・失敗

  トップダウンへの適応性

  態度と忠誠心

などが評価のポイントであり、当時の企業文化や組織にも大きな影響を与えました。