2-3. 昭和な働き方 ~ 高度経済成長期を支えた社会 ~ 終身雇用を支える家庭

企業と労働者のみが、高度経済成長期の日本型雇用慣行を支えたのではなく、家庭を含む社会や、政府も法制などによるその発展を支えました。

 

<家庭 ~ 専業主婦家庭>

終身雇用制度は、雇用を維持する代わりに家族への大きな負担を求めるものでもあります。

すなわち、家族唯一の収入源のために、長時間労働・転勤にも家族で対応する高度成長期の”昭和な働き方”が定着して行きました。

その見返りとして、専業主婦は年金・健康保険の受給を受けられるようになりました。

 

<法制 ~ 税控除>

政府もまた、税制面でサポートを行い、社会全体として定着していきました。

 

1. 勤続年数に応じた退職金の所得控除

退職金にかかる所得税ほかの退職所得控除額も勤続年数により変わるよう設計されています。

勤続年数20年までは年額40万円、それ以降は年額70万円と勤続年数が長いほど、控除額が増えるよう設計されています。

 

退職金と税|国税庁

 

これも途中退社が不利になるような制度です。

 

2. 配偶者控除

配偶者控除制度もまた、専業主婦家庭の税負担を抑え、終身雇用制度を支えるための税制度となっています。

 

No.1191 配偶者控除|国税庁 

 

 

<立法・司法 ~ 解雇権濫用法理>

日本の労働法は

  資本家は搾取するものである。よって労働者は守らなくてはならない

という原理のもとに制定されています。よってその雇用も解雇権濫用法理により強く守られている。

すなわち、下記のよう厳格に解雇の有効性を審査する判断要素が提示されており、終身雇用を維持するよう、いったん雇った正社員はなかなか解雇できない状況になっています。

①人員削減の必要性

②解雇回避の努力

③人選基準の相当性

④手続きの相当性

 

結果、現在においては、人材の流動性が失われているという雇用者側にも不利益がもたらされています。

 

<政策 ~ 中小企業の雇用維持>

高度経済成長期の1964年、OECD加盟による資本の自由化がなされました。

加入に際し、政府は中小企業の新陳代謝より雇用の維持を最大の政策とし、中小企業を保護・救済し、労働力確保させるため、中小企業基本法 (1963年~1999年)を導入しました。

その内容は

   法人税率の軽減

   交際費の損金処理

   外形標準課税の軽減及び法人事業税の減税

   少額減価償却資産

   繰越損金 など

が組み込まれました。

 

ただし、企業の淘汰にブレーキがかかり、本来、新陳代謝されるべきゾンビ企業が多く残る結果となりました。