3-1. 令和な働き方 - 高度経済成長期からの市場の変化 ~ 静から動へ

<人口 ~ 人口ボーナス期の終焉>

”東洋の奇跡”と言われた高度経済成長を支えた人口ボーナス期は去り、2008年をピークに日本の人口は減少へと転じました。平均寿命も延びる中、生産年齢人口は1995年をピークに減少へと転じ、人口オーナス期に入っています。

 

我が国の人口について

 

 図表1-1-7 出生数、合計特殊出生率の推移|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-|厚生労働省

図表1-2-1 平均寿命の推移|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-|厚生労働省

 

 

とくに顕著なのは高齢化率です。

GDPの50%以上が個人消費に頼る現状、当然、日本の人口が減れば需要も減り、GDPも減ります。

さらに高齢化率の上昇が、GDPを急激に押し下げ、さらに税収を押し下げます。

結果、政府支出が減り、社会インフラ・社会保障の維持すら困難となります。

 

少子化による人口減、特に生産年齢人口の減少は市場の縮小を招いています。

縮小する市場でシャアを求める戦略(コスト・リーダーシップなど)は、完全競争を招き、企業の超過利潤はゼロになってしまいます。

 

 

- 参考:アメリカの経済力の強さの源泉 -

アメリカの経済力の強さの源泉を戦争の経済学・地政学・移民政策に見ることができます。

戦争学の視点では、2回の世界大戦を通じ、アメリカはその地位を不動のものとしてきました。

司馬遼太郎もその著書”坂の上の雲”で、日清・日露戦争当時のアメリカを軍事も経済も二流国として描写しています。

しかし、戦争の経済学は、戦争の勝者であれ敗者であれ、戦争の主体となり、さらに国土が戦場となった場合、短期的(軍費など)にも、中長期的(人口減・産業の荒廃など)にもその経済合理性がないことを示しています。

そのような中、アメリカは荒廃しきったヨーロッパ諸国に対し融資することによりその経済力をつけてきました。

さらに地政学の視点ではアメリカは

   気候・資源に恵まれた土地

   太平洋・大西洋に面し、海を支配

   移民を受け入れ、常に若い労働力・購買力を持ち、人口増加が続く

という世界でも恵まれた条件を持っています。

そのほか、イノベーションを起こす土台、進んだ法整備がその経済力の強さの源泉となっています。

特に移民政策では、ヒスパニック系を中心に日本の高度経済成長期並みの人口増加が続いていることが、経済力の源泉となっています。

 

米国勢調査の最新結果から人口動態変化を読み解く | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

 

 

<消費者の欲求 ~ 物理的欲求から精神的欲求へ>

モノはマズローの欲求5段階説の物質的要求(生理的欲求、安全欲求)を満足させてくれます。

言い換えると、モノが少ない時代は、”役に立つ”モノを所有することが大切でした。

 

モノが飽和する現在、欲求は精神的欲求(社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求)へと昇華していっています。すなわち、顧客は単なるモノではなく、自己表現や社会的なつながりを求めるようになってきました。

言い換えると、モノがあふれている現在、モノを所有する”意味があること”が大切な時代となりました。

 

それを端的に表現した代表例は、Wikipediaにも掲載されている伝説のAppleのキャンペーン広告であるThink Differentではないでしょうか。

 

Think different - Wikipedia

 

<技術の浸透 ~ 動の変化が要求される時代へ>

消費者の経済的ゆとりの増大と欲求が変化する中、新しい技術の個人への普及スピードも格段に速くなってきています。

例えばアメリカでの世帯普及40%に要した期間を見た場合

  電話=64年、スマホ=10年

で普及しています。

 

The Pace of Technology Adoption is Speeding Up

 

すなわち、64年という静的な競合優位を確立できた過去に比べ、10年という動的な競合優位を継続的に確立する必要な時代になってきました。

 

<静から動へ> 

人口、特に生産年齢人口の増加・減少は需要・供給、両側面で大きな影響を与えます。 

さらに消費者の欲求は、物理的欲求から精神的欲求へと変化しており、結果、新しい技術の個人への普及スピードも格段に速くなってきています。 

企業としてまさに静から動への対応力が必要になっています。