1-1. 日本の働き方の原点 - 宗教から見る日本の働き方 ~ なぜ根回しが必要なのか

日本固有の社会的正当性(社会共通で醸成されている暗黙的合意。倫理観・価値観など)はどのように形成され、働き方にどのように影響しているのでしょうか。 

気候・風土・土地・食・宗教・・・社会的正当性は多くの要素に影響を受け、社会的正当性は働き方にも影響を与えています。 

まずは宗教の観点から見た日本の働き方を考察したいと思います。 

 

宗教はその国の社会的正当性に大きく影響を与えています。 

特に一神教(特に旧約聖書を共通の経典として持つキリスト教ユダヤ教イスラム教など)と多神教(神道ヒンズー教など)の特性の違いは、社会的正当性として大きな差となって表れています。 

 

一神教の価値観に見る働き方> 

一神教の世界では、全知全能の神がトップダウンで定めた唯一・絶対的な価値観が存在し、その内容に照らし合わせて、正しいか正しくないか、善いか悪いかを判断します。 

例えばキリスト教では、人間というものはそもそも間違えを犯す困った存在 (原罪)であり、その困った人間がしっかり生きるには、神が助ける必要になります。そのため、人は神と1対1で、契約と法律で結びついています。 

 

そのような罪の文化では、絶対的な価値観や明確な価値観が提示され、それに従い行動するという社会的正当性が醸成されていった。 

 

そのため、欧米を中心とする企業では 

  ジョブ・ディスクリプションでの業務内容定義+雇用契約として1対1で結びつき 

  明確なルールに基づく労働 

  ディベート、基準と数値による迅速な意思決定 

といった働き方の定着の一要因となった。 

 

多神教の価値観に見る働き方> 

そもそもトップである神が多数おり、神により個性も性格も異なるため、多くの価値観が存在します。 

例えば、ヒンズー教では、創造(ブラフマー)、維持(ビシュヌ)、破壊(シヴァ)のような性格が全く異なる多数の神が存在します。神道でも同じく、アマテラス(太陽の神)に対し姉弟でありながら暴力的なスサノオなど、まったく個性の異なる多数の神(八百万の神)が存在します。 

そしてその神々の多くは自然界への崇拝を表しているのも特徴です。 

 

そのため、多神教の国、多くの価値観が存在するなか、すり合わせによる合意形成が社会的正当性として醸成されていった。 

 

そのため、特に日本の企業では 

  会社の都合であらゆる業務をこなすメンバーシップ型雇用 

  根回し・すり合わせ型の意思決定 

といった働き方の定着の一要因となった。