1-3. 日本の働き方の原点 - 文化に見る日本の働き方 ~ なぜ一生懸命働くのが美徳なのか

日本固有の社会的正当性(社会共通で醸成されている暗黙的合意。倫理観・価値観など)はどのように形成され、働き方にどのように影響しているのでしょうか。 

気候・風土・土地・食・宗教・・・社会的正当性は多くの要素に影響を受け、社会的正当性は働き方にも影響を与えています。 

文化の観点から見た日本の働き方を考察したいと思います。 

 

日本人は「良い仕事をしたい」「良いモノを作りたい」という職人魂にあふれています。時に苦しみを乗り越えた先の達成感のために多大な情熱をかけます。そして良い仕事、良いモノには使用者として敬意を払います。 

また、強欲な金儲け主義には直感的に嫌悪を感じます。 

そのような美徳感覚はどこから来たのでしょうか。 

 

<仕事は修行> 

現生の苦しみからの救済を求め、日本人は昔から仏教を信仰し仏教に頼ってきました。 

しかし、僧はともかく、一般の人びとには日々の務めがあり、苦しい労働がありますから、特別な修行や仏行を行うことは難しい。 

そんな折、戦国武士から禅僧となった江戸時代初期の人、鈴木正三は「世俗の仕事は宗教的修行であり、それを一心不乱に行えば悟りが開ける」と説いた。 

この彼の“四民日用”という思想により、以降、仕事は修行と同じく苦しいもの、それが救いへの道という考えが日本の働き方の原点の1つとして広まっていった。 

 

<顧客に誠実に> 

江戸時代の商人は身分制度上は最下位であり、金儲けは卑しいものとされていた。 

江戸時代中期の商人である石田梅岩は、鈴木正三の“四民日用”という思想に感銘を受け、「武士が主君への忠義がないのに禄をもらえば武士とは言えない。商人も、顧客への誠実さがないのにモノを売るのは、商人とはいえない。」と説いた。 

新渡戸稲造がその著書”武士道”でも説いた”忠義”の心を商業にも取り入れ、利益以上に誠実さをもって商売をすることを説いたことばも日本の働き方の原点の1つとなって広まっていった。 

 

 

アダム・スミスは”見えざる手”という言葉で、利己的な行動が社会に利益をもたらすと説いた一方、環境問題・社会問題に対応するため、今、企業にはSDGs経営も求められるようになってきました。 

この美しい日本の働き方の原点を大切にしながら、よりよい会社を目指していければと思います。